会長挨拶
この度、一般社団法人日本オリエント学会の会長に就任いたしました。
本学会は、1954年に三笠宮崇仁親王殿下を初代会長として創設され、2013年の一般社団法人化を経つつ、70年余りの長きにわたって日本のオリエント学の発展と普及に貢献してまいりました。この間、本学会の活動にご理解とご尽力を賜りました皆様に、改めて厚く御礼申し上げます。
本学会は、「オリエントの歴史と文化に関する学術的研究成果の発表と調査研究を行う」ことを定款の第3条(目的)の筆頭に挙げており、先史・古代から現代までの時代を対象として、オリエント地域に関連する歴史や文化を扱う多様な専門家を擁することが特徴です。オリエント地域は古代文明揺籃の地であり、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教を含む多様な宗教が生まれた地でもあります。古くから国家・民族・宗教・文化・政治等が複雑に絡み合ってきたオリエント地域に焦点をあて、多様な観点から見ていくことによって、本学会の活動は人類の長期的な営みや文化・文明の本質に迫る重要な役割を果たしています。
本学会は、毎年度1回の総会と大会の開催および邦文2冊・英文の1冊の学術雑誌の刊行等をはじめとする学術研究発表の機会を提供し、さらに三笠宮オリエント学術賞および奨励賞を授与すること等によって、オリエント学の専門家の支援と育成に尽力してまいりました。また、関連学会やイベントへの連携・協力、中・高校生の「オリエント世界」作文コンクール等を行って、オリエント学の普及にも努めてまいりました。これからの学会運営につきましても、基本的には長年行ってきたこれらの優れた事業を継続してまいりたいと思います。
他方、近年技術・経済・国際関係を含めた社会環境は大きく変化してきており、本学会もこれらに対応した変革が不可欠と認識されてきました。すでに運営の効率化と財政の改善を目指して、大会プログラム委員会の設置、会費の値上げ、マイページの導入(作業中)等が実施されてきました。そして、今後さらなる改革に取り組む必要があると考えています。
現代日本の社会的変化の中で、本学会にも多大な影響を与えつつあるのは少子化と人口減少であり、今後AIがもたらす影響は予測困難でもあります。このような状況下においても、あるいはそれだからいっそう、長期的な人類史を視野に入れたオリエント学の発展と普及を志す本学会の活動は極めて重要であり、未来に向けて学術的および社会的貢献を目指す方向性を模索していきたいと思います。会員および関係者の皆様に、ご協力をお願い申し上げるとともに、ご意見・ご提案を本学会にお寄せくださいますようお願い申し上げます。
最後に、オリエント地域では現在も紛争や武力衝突が起こっており、平和と安定を心から願ってやみません。
2026(令和8)年7月吉日
日本オリエント学会会長 髙宮いづみ