第44回(令和4年度)奨励賞受賞者(令和4年10月29日授与)

第44回(令和4年度)奨励賞受賞者(令和4年10月29日授与)

第44回(令和4年度)奨励賞受賞者(令和4年10月29日授与)

氏名 所属機関・職名
(受賞対象論文執筆時)
受賞論文
山崎世理愛 日本学術振興会特別研究員PD(金沢大学) 「エジプト中王国時代における供物儀礼の戦略的実践――『王族の器物奉献儀礼』行為とその思想的背景――」 『オリエント』第64巻1号
久保亮輔 一橋大学大学院経済学研究科博士課程/日本学術振興会特別研究員DC 「15-16世紀エジプトのイスティブダールをめぐる学説と現実の相克――ハナフィー派法学者の所論に立脚して――」 『オリエント』第64巻1号

授賞理由

氏名 授賞理由
山崎世理愛  本論文は、エジプト中王国時代の葬送儀礼の一つである器物奉献儀礼の実態を明らかにするために、棺のオブジェクト・フリーズ(装飾帯)に描かれた器物の図像とその配置、ならびに副葬品としての器物の棺内外での配置を分析したものである。詳細なデータの収集・分析から、器物が、図像と副葬品において、反復的・重層的に配置されていることを指摘した上で、このことが、オシリス神化した死者に神々が訪れ、それによって死者が守られて新たな生命を与えられる儀式(「通夜」)が反復的に行われることを、埋葬空間で理念的に表現したと結論する。エジプト中王国時代の葬送儀礼の一つである器物奉献儀礼の実態と思想的背景を帰納的、実証的に論じることにより、オリジナリティのある結論を導くことに成功しており、研究者としての将来性を感じさせる。以上の理由から日本オリエント学会奨励賞を授与することとした。
久保亮輔  本論文は、ワクフに寄進した物件を他の物件と交換する制度(イスティブダール)が、15–16世紀のエジプトにおいて実施されたことが、当地の社会経済にどのような影響を与えたかを、ハナフィー派の法学者の見解に着目することで明らかにしようとする。チェルケス・マムルーク朝期とオスマン朝期の2人の法学者の見解を比較・考察することで、時代の変遷とともにイスティブダールが社会に次第に根付き、日常的なものになり、ついには過剰に行われて既存のワクフの健全な経営を脅かすようになるという社会経済史的変遷を読み取っている。本論文は、対象とした時代や史資料が限られているものの、研究史の回顧、論点の整理・提示が明瞭で、論理展開に優れており、今後の研究のさらなる発展が期待できる。以上の理由から日本オリエント学会奨励賞を授与することとした。
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