第3回三笠宮オリエント学術賞授賞について

第3回三笠宮オリエント学術賞授賞について

会長 鎌田 繁

日本オリエント学会では、本学会の創立者のおひとりで、日本におけるオリエント研究の推進者であられる三笠宮崇仁殿下の名を冠した「三笠宮オリエント学術賞」を設け、日本におけるオリエント研究の発展に大きな学術的貢献をなすと判断される業績を顕彰し、もって研究者の育成に資することとしています。

厳正なる審査の結果、下記会員に第3回三笠宮オリエント学術賞を授賞することを決定いたしましたので、ご報告申し上げます。

受賞者 中田一郎会員
(古代オリエント博物館長)
受賞業績 『ハンムラビ「法典」』(中田一郎訳・註・解説、リトン、1999年;第2版、2002年)、ならびに『古代オリエント事典』(日本オリエント学会編、中田一郎編集委員長、岩波書店、2004年)、『メソポタミア文明入門』(岩波ジュニア新書)(中田一郎著、岩波書店、2007年)、『ハンムラビ王』(世界史リブレット)(中田一郎著、山川出版社、2014年)など一連の編集と著作
選考経過  学会ウェブサイト、『オリエント』誌上、学会メーリングリストその他を通じて、被推薦者の募集を2014年12月17日より行った。その結果、募集締め切りの2015年1月19日までに5名の研究者の業績が推薦された。
 理事会が選任した選考委員会は、各業績の内容とその推薦理由を子細に検討したうえで、被推薦者の専門領域に通じた選考委員による批評をもとに、全委員で被推薦者の業績について意見交換を行い、中田一郎氏を第3回三笠宮オリエント学術賞受賞候補者として理事会に推薦することに決定した。理事会は、2015年3月24日に開催された第539回会合において、この推挙を全会一致で承認し、中田一郎氏への受賞を決定した。
授賞理由  中田一郎氏による『ハンムラビ「法典」』は、紀元前18世紀にバビロニア王ハンムラビの名のもとに著され、石碑に刻まれた約8000語に及ぶ碑文全文の翻訳・解説である。最古の法律集の一つとして知られるこの作品に邦訳の前例はあるものの、中田氏の訳業は、法典碑本文と50以上の粘土板写本の校訂本を底本とし、アッカド語の原文に忠実に訳出され、楔形文字文書研究者による精度の高い翻訳事業として、本邦初のものである。
 ハンムラビ法典には、法規部分に加え、王の政治的・社会的業績や社会正義に関する考え方を記した序文と跋文が付されており、その資料的価値は、歴史学、法学、社会学、文献学等、多くの分野に及ぶ。中田一郎氏は、本文の翻訳に続き、法規部分をジャンルごとに分類して、裁判、社会階層、職業、契約制度、家族制度、刑罰、賠償、商業、農業、奴隷制等に関する内容を歴史的、社会的に論じたほか、「法典」の法的、文学的性格について従来の研究を批判的に検討しながら分析している。
 中田一郎氏は、『ハンムラビ「法典」』出版後も、我が国の学界に古代オリエント研究を普及、紹介するために優れた業績を発表してきた。特筆すべきものとして、日本オリエント学会発足50周年記念事業として行われた『古代オリエント事典』(2004年、編集委員長)、我が国の古代オリエント学関係の講座で標準的教科書として活用されている『メソポタミア文明入門』(2007年)、バビロニアの古典時代となったハンムラビ王の治世を政治、軍事、社会に注目して解説した『ハンムラビ王』(2014年)があげられる。こうした事業には、中田一郎氏が専門的に取り組んできた楔形文字文書研究を中心とした古代メソポタミア世界についての深い学識が誠実に反映されている。こうした点に鑑みて、中田一郎氏は、日本におけるオリエント研究の発展に特に大きな学術的貢献をなしてきたと評価できる。
授賞式 日時: 平成27年5月23日(土)午後1時より
会場: 東京都千代田区神田錦町一丁目9番地  東京天理ビル9階 天理ホール
授賞式後、受賞者による公開講演「ハンムラビ法典―意外と知られていない話」があります。

参考: 日本オリエント学会三笠宮オリエント学術賞内規

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