第36回(平成26年度)奨励賞受賞者 (平成26年10月25日授与)
氏名 | 所属機関・職名 (受賞対象論文執筆時) |
受賞論文 |
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千本真生 | 東海大学大学院文学研究科研究生 | 「ブルガリア前期青銅器時代における縄目文土器の変遷―デャドヴォ遺跡の事例を中心として」『オリエント』56/2 (2013) |
授賞理由
氏名 | 授賞理由 |
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千本真生 | 本論文は、トラキア平原の前期青銅器時代に用いられた縄目文土器の出自や変質過程に関して、デヤドヴォ遺跡の出土品の分析に基づいて論じたものである。これまで縄目文土器の出自については、黒海北部以東からの搬入説と在地模倣説の二説が併存していた。本研究では、初期には搬入、やがて在地生産の開始といった段階的変化があったと結論付けている。また、搬入や在地生産といった変遷は、トラキア平原全域で一様に起こったのではなく、東部から西武にかけて漸次進行していったこと、中継地があったことなども明らかにした。 その分析は手堅く、論証も説得力がある。分析結果を前期青銅器時代におこったトラキア平原の社会変化の枠組みの中に理論的に位置づけるなどが、今後の課題とされるのであろうが、本論文に示された研究成果は、従来の研究を前進させたものとして高く評価される。また、縄目文土器の施文原体分析、胎土の岩石的分析など、従来の当該地域の青銅器時代研究では用いられなかった手法を新たに導入した意欲的研究であることも、今後の研究の進展を期待させるものと言える。 |