本論文は、スーフィズム研究のなかではつとに名前が知られていながら、研究の進んでいないシャアラーニーを取り上げて正面から論じた清新な論文である。神秘主義の形而上学的次元についての研究が従来のスーフィズム研究の中心であったが、この論文では形而上学的「完全人間」に対応する形而下的な「完全な者」というシャアラーニーの考えに着目することで、従来の形而上学的神秘主義研究を超える視点を提出することに成功している。その際、これを法学や神学を含むイスラーム思想全体のなかに位置づけようとしている点も、独自の貢献と言える。
原典資料の詳細な読解、研究史における自らの論文の位置づけ、問題設定、論文の構成が整っており、分析にも深みがある優れた論攷と評価できる。
ただ、まだ端緒に就いたばかりの研究であり、今後、同一課題でさらに研究を深化させることを期待したい。 |